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なんだ、この心にぽっかり穴が開いたような気持ちは……。
「かもしれまへんな。何年前まで戻ったかもわからしまへんし、下手すりゃ、生まれる前まで戻っとることもあるしな」
「おい、生まれる前ってどういうことだ」
俺は、テーブルを激しく叩きつけながら、怒鳴った。
「言ったまんまの意味やで、存在自体がのうなったってこっちゃろ」
存在自体が……消えた?
この場からいなくなっただけじゃなく、もう二度と会えないってのか?
リコが嬉しそうに、笑いかけてくることも。
リリィがくそまじめに、手合わせを挑みにくることも。
ナノが馬鹿みたいに、じゃれてくることも。
そういうの全部なくなっちまうっていうのか……?
そんな……。
そんなのは絶対に嫌だ!!
「おい、なんとかなんねぇのかよ」
俺は箱に掴みかかった。
あいつらがいなくなるなんて、考えられねぇよ。
「なんとかねぇ……それを願いにするんやったら、どうにかならんこともないけど」
「だったら、どうにかしろ! 今すぐに! 俺の願いなんてくれてやる!」
言いながら、俺は箱をぶんぶん揺らした。
箱は苦しそうに蓋をかぱかぱと開けている。
「あ~もう、何熱くなってまんのや、振り回さんといてぇな! だいたい所詮他人のことやないかい」
「人ごとなんかじゃない! あいつらは俺の大切な仲間だ!!」
そう、言ってしまって。
誰よりも俺自身が驚いた。
仲間だってことに実感がなかったわけじゃない。
仲間と言われて嬉しいことだってあった。
でも、まさか、こんなに大切だったなんて思いもしなかった。
絶対失いたくない。
今は素直にそう思う。
「俺の願いはあいつらを助けること。叶えてくれるよな」
俺は箱をテーブルの上に置き、静かに言った。
・・・つづく |
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